Salesforce開発者から見たHubSpotの用語対応表

HubSpot と Salesforce はどちらも代表的な CRM プラットフォームですが、オブジェクト構造や用語の考え方がかなり違うため、 Salesforce しか触ったことがないと、HubSpot 側の設計や連携設定で混乱しがちです。
このページでは、Salesforce を基準にして、HubSpot 側の用語や概念の対応関係を整理しています。
厳密に 1:1 で対応しない部分もあるため、その場合は「補足」にて違いをコメントしています。

1. 基本CRMオブジェクトの対応

概念(何を表すか)Salesforce の用語 / オブジェクトHubSpot の用語 / オブジェクト補足
見込み客・顧客(人)リード(Lead)/取引先責任者(Contact)コンタクト(Contact)Salesforce では「見込み客」はリード、「取引先に紐づく人」は取引先責任者で管理します。
HubSpot では、人は基本的にすべて「コンタクト」で管理し、状態の違いは後述のライフサイクルで表現します。
取引先企業取引先(Account)会社(Company)「企業・組織」を表すオブジェクト。
Salesforce の取引先と HubSpot の会社は、標準連携でも 1:1 マッピングされることが多いです。
商談・案件商談(Opportunity)取引(Deal)売上につながる「案件」を表すオブジェクト。
フェーズ(ステージ)を進めていく単位としての考え方もほぼ同じです。
問い合わせ・サポート案件ケース(Case)チケット(Ticket)顧客からの問い合わせやサポート依頼を管理するオブジェクト。
Salesforce のケースと HubSpot のチケットはほぼ対応します。
活動履歴(メール・コール等)活動(ToDo/タスク/行動など)アクティビティ(Activities/Engagements)メール送信、電話、タスクなどの履歴を管理する概念です。
HubSpot から Salesforce へは、タスクとして同期する構成がよく使われます。
カスタムオブジェクトカスタムオブジェクト(Custom Object)カスタムオブジェクト(Custom Object)両方とも独自のオブジェクトを追加できますが、
連携する場合は項目レベルまでマッピング設計が必要です。

2. リード/ライフサイクル関連の用語対応

概念Salesforce 側の用語HubSpot 側の用語補足
「リード」という状態リード(Lead)+ リード状況(Lead Status)ライフサイクルステージ(Lifecycle stage)の「リード/MQL/SQL」などSalesforce は「リード」という専用オブジェクトを持ち、
リード状況で状態管理します。
HubSpot は専用オブジェクトではなく、コンタクトのライフサイクルステージの値で
「リード」「MQL」「SQL」などの状態を表します。
リードの状態管理(営業視点)リード状況(Lead Status)リードステータス(Lead status プロパティ)「新規/対応中/不適格」など、営業視点での細かい状態を表す項目です。
概念としては Salesforce のリード状況と近く、連携時もここがよく対応付けられます。
顧客のフェーズ(ファネル上の位置)専用の 1 オブジェクトはなし(
リード状況・商談フェーズ・独自項目などの組み合わせで表現)
ライフサイクルステージ(Lifecycle stage)
例:見込み客、MQL、SQL、商談中、顧客 など
HubSpot ではライフサイクルステージがマーケ・営業共通の軸になります。
Salesforce ではオブジェクトを跨いで状態が分散しやすいため、
HubSpot に合わせる場合は「どの状態をライフサイクルステージに対応させるか」を設計する必要があります。

3. パイプライン・ステージ系

概念SalesforceHubSpot補足
商談パイプラインセールスプロセス(Sales Process)+ 商談フェーズ(Opportunity Stage)取引パイプライン(Deal Pipeline)+ 取引ステージ(Deal stage)どちらも、「フェーズが並んだパイプライン」の考え方は同じです。
フェーズ名や確度の定義を合わせておくと、レポートの意味が揃いやすくなります。
サポートパイプラインケース種別・ビジネスプロセス・ステータスなどの組み合わせチケットパイプライン(Ticket Pipeline)+ チケットステータスHubSpot はチケット用パイプラインを複数持てるため、
Salesforce 側でもケース種別やレコードタイプを使って近い構造にすると理解しやすくなります。

4. マーケティングまわりの用語

概念Salesforce の用語HubSpot の用語補足
マーケティング施策(キャンペーン)キャンペーン(Campaign)キャンペーン(Campaign)名称は同じですが、そのまま 1:1 で同期されるわけではありません。
どちらのツールを「レポートの主軸」にするか決めてから構成を考えると迷いにくくなります。
メール配信リスト/セグメントキャンペーンメンバー、レポート、リストビュー などリスト(List:静的リスト/動的リスト)HubSpot では「リスト」がメール配信やセグメントの中心的な単位になります。
Salesforce では、キャンペーンメンバーやレポートの結果、リストビューなどで近いことを実現します。
WebフォームWeb-to-Lead、Web-to-Case、
Experience Cloud のフォーム など
フォーム(Form)HubSpot はフォームがそのままコンタクト/会社/取引などに紐づきます。
Salesforce 側と連携する場合は、「フォーム送信 → HubSpot でコンタクト作成 → Salesforce に同期」という流れを取る構成が多いです。

5. 自動化・営業支援系

概念SalesforceHubSpot補足
条件分岐による自動処理フロー(Flow)/旧ワークフロー/プロセスビルダーワークフロー(Workflows)「条件に合致したら自動で更新・通知・タスク作成などを行う」という意味では同じです。
設計の考え方も似ているため、「Flow = HubSpot のワークフロー」とイメージすると理解しやすくなります。
営業メールの自動ステップ配信セールスエンゲージメントのシーケンス/カデンス などシーケンス(Sequences)1通目 → 反応がなければ 2通目 → それでもなければタスク作成…といった営業向けのメール自動化機能です。
Salesforce 標準だけでは近い機能がなく、追加製品で対応するケースが多いです。
項目(フィールド)項目(Field)プロパティ(Property)レコードが持つ「列」に相当する概念です。
連携画面では、Salesforce の項目と HubSpot のプロパティを 1:1 でマッピングして同期させます。
オブジェクト(テーブル)オブジェクト(Object)オブジェクト(オブジェクト種別としての Object)「レコードの入れ物」という意味では同じ概念です。
ただし、Salesforce の標準オブジェクト構成(リード/取引先/取引先責任者/商談)と、
HubSpot の構成(コンタクト/会社/取引/チケット)は思想が異なるため、設計段階で整理が必要です。

6. ざっくりイメージまとめ(Salesforce 脳向け)

  • 「人」は Salesforce だと「リード+取引先責任者」、HubSpot だと「コンタクト 1 本」
    HubSpot はコンタクトのライフサイクルステージとステータスで状態を切り替えます。
  • 「企業」は Salesforce の取引先 ≒ HubSpot の会社
  • 「案件」は Salesforce の商談 ≒ HubSpot の取引
  • 「問い合わせ」は Salesforce のケース ≒ HubSpot のチケット
  • 「項目」は Salesforce の項目 ≒ HubSpot のプロパティ

まとめ

両ツールとも「顧客情報を一元管理する」という目的は同じですが、
Salesforce はオブジェクトを細かく分けて役割を持たせる設計
HubSpot はコンタクト/会社/取引/チケットを中心に、ライフサイクルやステータスで状態を表す設計
という違いがあります。

特に、Salesforce でリードと取引先責任者を分けて運用している組織が HubSpot を触ると、
「なぜ人は全部コンタクトなのか」「ライフサイクルステージのどこがリード相当なのか」で戸惑いやすいです。
この対応表をベースに、

  • どの Salesforce オブジェクトを HubSpot のどのオブジェクトに同期させるか
  • どの項目とどのプロパティを対応付けるか
  • どちらのシステムを「マスタ(正とする側)」にするか

を先に決めておくと、実際の連携設定や運用ルールが作りやすくなります。
自社のリード定義・商談フロー・サポートフローを図解しつつ、
「HubSpot 上ではどのステージ/パイプラインで持つか」を決めるのがおすすめです。